Harry E. Wilkins, III M.D.にお会いしました。

今日は日曜日なんですが、Edwards社が主催のIntensivist Seminarに、当科の尾迫貴章先生と一緒に行ってきました。主に外傷や敗血症等のショック患者の循環モニタリングをどうするかという話ですが、東京医大八王子医療センターの池田寿昭先生の司会で、泉州救命救急センターの渡部広明先生が外傷や消化管出血でショックになっている場合のモニタリングについて、大阪大学麻酔・集中治療医学教室の藤野裕士先生が肝移植患者の循環モニタリングについて、ビジレオモニターやフロートラックの有用性を話されていました。そして招請講演者として、アメリカMissouri、Saint Luke’s Health SystemのHarry E. Wilkins, III M.D.が、脳死患者が臓器提供を行うまでの循環管理におけるビジレオモニターやフロートラックの有用性を紹介されていました。Wilkins先生はAcute Care Surgeonであり、集中治療医でもある方です。脳死患者のドナーが出るとその病院へ赴き、全身管理を行うそうです。ただし報酬はかなり安いとか…今の日本では臓器提供の意思表示をしている脳死患者の管理や臓器提供に至るまでの諸々の手続きはその提供病院が行っていますが、ほとんどの場合我々のような救命救急センターです。考えてみると、重症患者の治療と並行してこのようなことを行っていると、ともすれば事故にもつながりかねません。アメリカのようにドナーの管理がシステマティックになされる仕組みを作ることは、臓器提供という崇高な意思を示されている脳死の方々、移植を受ける方々、救命救急センターで治療を受けている方々、そしてミスが許されない業務をこなしている医療者にとっても、必要な事なんだと思いました。

さて、講演会が終わってから懇親会があり、Wilkins先生とお話しました。とても気さくで、日本での講演に際して日本の現状をきちんと調べられていますし、会に参加された日本の先生方みんなにご挨拶に回ったりと、かなり日本人的なホスピタリティーにあふれた先生でした。外傷と敗血症の循環動態の違いについて多くの意見交換をしましたが、私がニュージャージー州立医科歯科大学のRobert Wood Johnson医科大学病院に居た話から、アメリカでの共通の友人のことやアメリカならではのおかしな話になりました。なかでも、私の病院の研修医達が大学病院の分院があるCamdenを異様に恐れていた話では盛り上がりました。そこは信号が赤でも車を止めてはいけないくらい危険な地域なのですが、それだけに外傷患者、とくに銃創が多いので、Acute Care Surgeryの修練にはうってつけなのです。しかし、若い研修医達はCamden病院の研修が近づいてくると「different world」に行かなければならないと戦々恐々としていたのがかわいそうと言うよりおかしくて、その話で大いに盛り上がりました。

 

私はアメリカに留学する前はほとんど英会話が理解出来ませんでした。留学中にあまり英語を使わない人たちも多いのですが、私の赴任病院には日本人が私以外誰もおらず、またボスも移籍したばかりで新しい企画の立ち上げを任されましたし、最安の健康保険で子供が2人生まれましたので(うち一人は帝王切開、しかも自分でしました!)、交渉事が多くて、とにかく英会話の勉強をせざるを得なかったのです。その甲斐あって、今ではなんとか英語が話せるようになりましたが、こういうところで外国の先生方と直接お話すると、つくづく勉強しておいてよかったなと思います。若い先生方にはいつも英語の勉強を勧めている所以です。頑張って下さい!

 

Harry E. WilkinsとEdwards社の最新型ビジレオ&フロートラックのインターフェイスの前で記念撮影。二人ともすでに酔っぱらってます。