第20回千里メディカルラリーの報告🍀

第20回千里メディカルラリーが終わって一ヶ月弱が過ぎました。
応援・協力してくださった皆様、本当にありがとうございました。
出場者の各ステーション(ST)の感想をいただいたので、掲載します。

#ST1 多数傷病者事案
#ST2 一時避難所での息苦しさ
#ST3 プールサイドで小学生2名の心肺停止
#ST4 工場で怪我した20代男性
#ST5 搬送困難症例についてのアンケート
#ST6 55歳男性 頭痛と嘔気の後、意識障害
#ST7 20代男性 嘔吐+意識障害
#ST8 都市直下型地震 瓦礫の中の生存者

ST1 多数傷病者事案



消防局所属救命士の末岡と申します。ST1でチームの指揮者を務めました。これより、シナリオの概略及び評価の主眼を簡単にご紹介します。

ST1のテーマはクライムシーン(事件現場)での多数傷病者発生事案でした。車両が群衆へ突っ込み、その後運転手がナイフを持って無差別に殺傷行為を繰り返した、という想定内容です。
本想定では、多数傷病者発生事案時の活動原則にあるCSCATTTを適切に遂行できるか、が評価されました。
想定現場では、特殊メイクを施した模擬傷病者が多数倒れており、また、傷病者以外にも慌ただしく動きまわる警察官や現場を見て騒然としている一般人等が設定されており、緊迫感あふれる雰囲気が演出されていました。
難易度の高い想定で、理想とする活動には至りませんでしたが、それでもこれまで培ってきたチームワーク、知識及び技術を発揮し、参加チーム全体の中では2位の成績をおさめることができました。
実現場のように演出できるのは、想定担当者の入念なシナリオ作りはもとより参加スタッフ及び準備資機材が充実しているからであり、メディカルラリーの特色でもあります。今回の大規模な想定シミュレーションに取り組むことで、大変多くの学びを得ることができました。

ST2 一時避難所での息苦しさ



こんにちは。ST2担当のNs Lisaです。

ST2では、災害地域に小規模の避難所が設立されており、そこで具合が悪い人が発生している模様です。救急隊チーム、ドクターカーチームで活動にあたります。災害支援避難所系シナリオのコマンダーは、わたし!先着救急隊に混ざっていざ現場へ!
たくさん避難者の方がいます。マンパワーは充足しているので、通報のあった傷病者以外にも具合の悪い人はいないか、具合を悪くするような環境要因はないか、手分けして情報集め。
・・・おや?完全に最初の趣旨を忘れて避難所の評価までガツガツしているわたし、先着救急隊でしたよね?笑
そんなことをしている内に、肝心の傷病者は、EMTベーさんがサクッと初期評価と情報収集をして、後着のDr.みっきーとNsみやっちがバシッと診断、処置をしてくれました!
それでは搬送準備に、、、やっべーわたしがコマンダーなんでした。病院搬送依頼すんのわたしか!汗
てことで救いの神EMTバヤシがフォローに来てくれたので、お任せします。餅屋に返却。
とまあ皆様に助けられてばかりでしたが無事に終了。

さてこのシナリオ、傷病者の的確な診断処置はもちろんなんですが、もう一つ大切なことは避難所の方々への配慮です。
一時でも、避難者の方にとってはそこが生活の場であることを忘れずに、被災された気持ちにどこまで寄り添えるか。
そこで大事になる接遇面は、このチームは絶大な信頼がおけるメンバーばかりです。その中でも、No.1はやっぱりこの人!
Dr.チカ!わたしとバヤシが謎英語で健康確認していた、日本語が全く通じない外国人家族の心をバッチリ掴んでいるではないか!これは単に英語力の問題とかではない(たぶん)
いつもみんなが感動するような寄り添いの言葉掛けや行動が意識しなくても自然にできて、本当に見習うところばかりです!

災害大国日本、自身が被災者になる可能性も考えて備えておかなくてはいけません。
阪神大震災のあの日、お母さんに付いて配給に並んだ。あの頃は何もできない子供だったけど、今は違う。避難所での疾病予防の知識があるだけで、救える命だって少なからずあるはず。そんな小さな、原点回帰。

ST3 プールサイドで小学生2名の心肺停止



私は消防救命士の大林(コードネーム「BAYASHI」)
私はST3 小児のCPA2名の振り返りをしよう。

ST3は非番の救命救急士2名がトレーニングジムへ向かうところから始まる症例だな。ラリーに向けて禁酒したが、終わって飲んだし、あまり覚えてないな。
そうだ。応援に来てくれたナースが取ってくれた動画を観よう。

(よいしょっと)
(お、始まったぞ。そうだ、昼食前の最後の症例だ)
想定開始前は階段前の屋内で待機。綺麗な青空。程よく涼しい風が緊張で熱くなった身体を冷ます。よい天気だ。
想定が始まった
まずは私とキャップの2名が誘導員に連れられ3階まで上がる。誘導の人はこの階段を何回上がってるんだろう。息が上がっている。
3階へ到着すると、誘導員から1番奥へ行き、突き当たった右手にジムがありますと説明を受ける。丁寧にも「←yukaZAP」との看板もある。その距離約50m。さあ、ここは普段鍛え上げた脚力でダッシュだ!!
タッタッタッタ(我ながら軽快なステップ)
と、30mほど走ったところで、さっきいた階段付近から「助けてください。こちらへ来てください」との声が。急いで戻ると、そこは25mプール。25mを1番奥までさらにダッシュすると、2人の小児人形が胸骨圧迫をされている。

(ここが想定場所か!しまった。かなり体力を削られたぞ。)
すぐさま「責任者は?119番通報しましたか?AED持ってきてください。」と、指示を出す。(おい!まずは消防救命士であることを名乗らなければ!)
救命士2人で分かれて小児に取りつく。私が取りついた胸骨圧迫をしている女性から状況を聴取し、他に溺れた子はいないと聞いたあたりで、胸骨圧迫が速い!と指摘を入れる(何様だ)
そうこうしていると、名子役の2人がAEDを持ってきた。横には有難いことにタオルも置いてある。タオルで身体を拭き、AEDの電源を入れ小児用パットを貼ると解析start 
「離れてください ショックが必要です 充電中です 点滅ボタンを押し・・・」
(待てよ、何かが引っかかる)
(なんだこの違和感は、、、)
(名札が横にあるぞ)
「名前 〇〇 ○  小学2年生」
(しょ、、、しょうがく2年生ッ!??)
(就学児ではないかっ!!)
(やってしまった!大人用パッドを貼らなければならなかった!つい、あの人形には小児用パットを貼る癖がついていた。。。)
ドクターカー到着後、私の方にはちか先生とみやっちナースが駆け寄る。なんと心強いことか。ちか先生が骨髄針でルート、薬剤を投与、私はみやっちと交代して頭側へ。ここからは15:2のCPRだ!
Venus医師とみやっちナースの活躍により、なんとか心拍再開
もう1人の小児はキャプテン、みっきー医師、リサ姉ナースが処置している。遠目だが同様の処置に加え、気管挿管されている(さすが!キャプ&みっきー&リサ!)

そうこうしているうちに想定終了

終了後の感想として、え、え、なにこれ?なんなん?できてたん?これで良かったん?ああー小児なんやから、もっとはよ人工呼吸せな!!それより就学児には大人用パッドやん!!!と自省。改めて、救命活動には限界がないことを痛感する。
今回優勝したものの、2週間たって筆をもつ今(フリック操作やろがい)、できなかったことの自省の念が強まる。参加し、改めてこのラリーの意義を感じ、自己研鑽に励まなければと意識が高まり、ビアグラスを握る。

最後に千里メディカルラリーを主催していただいた千里救命スタッフをはじめ、ボランティアスタッフや兵庫医大の方々、また誘っていただいた上司や手伝ってくれた上司、先輩、部下たち、本当に感謝申し上げます。
末長くこのメディカルラリーが続くことを願います。

今回の千里メディカルラリー出場に向けて約1年前に結成した宮っ子ピーポー、みんなが高い意識を持って救命活動に心血を注ぎ、切磋琢磨した
最高の仲間   本当に感謝    乾杯!    BAYASHI

ST4 工場で怪我した20代男性 



ST4担当、医師のちかです。実際の現場でできること。本で勉強はできるが百聞は一見にしかずである部分も多く、救急対応というのは本当に難しい。命を預かった状態で、確実である迅速な決断を迫られ、ちゃんとできる実力も必要です。ST4はまるで実際に経験したと思わせてくれるようなシナリオでした。

私しか彼の対応ができない。開始15秒で責任を感じさせる圧迫感。流石千里ラリーと言わざるを得ない。大丈夫、いつも通りみやっちが補助に、キャップとベーさんも動いていることがわかる。

私しか彼の表情は見えない。明らかに危険。実臨床で感じたことがあるひと目でわかる状況だ。その伝わり方が、シナリオであることを忘れさせられ異様な雰囲気だと感じた。

私しか神の声は聞こえない。両足の大量出血を表現する赤いペンキを見つめた。状況把握しながら、彼との会話を絶やさず、手は絶対に止めない。応援に来てくれた上司、スタッフの視線が私にさらに詰め寄っていた。輸液、トランサミン、圧迫止血し、ターニケット、念の為DCパットを装着した。変わらないという神の声だけが響く。次にできることは1つだけ、彼の両足を奪うことだ。

私しか足を切り落とせない。振り向いて、キャップとすぐ目が合いキャップと唯一の会話をした。彼を診た私、状況を把握したキャップが一言だけで治療が進むことに喜びを感じた。離握手で彼の意思を、メンバーも彼の家族を探し出して意思を確認していた。「切りましょうか」

私しか彼の全てを知らない。だから助けられない、思いつく処置はやり切った、もう手はない。その時みっきーの声が現場に響いた。その瞬間全てが鮮明になり景色に色がついた。みっきーと勢いに任せながら処置した。時間がない。だがそんな時も処置内容を口頭試問される。たかがシナリオだと引き戻されそうになるが耐えた。みっきーの一言から息を止めていたのか、拍手喝采で急に楽になった。チームでやり切った症例。一気に緊張感、責任感、解放感、達成感が私の中を駆け巡った10分だった。この気持ちが私をまた救急の現場に誘うのである。

「絶対にここで助けよう」

ST5 搬送困難症例についてのアンケート

競技ではなく点数も全チーム同じブース。搬送困難症例(延命を希望していない患者の血圧低下など)について、三次救命センターの対応、施設やかかりつけ医の連携をどう進めていくのがベストか、救急隊や医師、看護師の視点から話し合う機会となった。

ST6 55歳男性 頭痛と嘔気の後、意識障害



BAYASHIです ST6について
みんなに疲れが見え始め、私にはアルコール解禁が見え始めたこの日6想定目
ST6はスーパーの駐車場で55歳男性が倒れているというシナリオ
私とキャップの救命士2名に加え、要員から助っ人隊員が1名 計3名で現場へ向かうことに 残りのメンバー4人は搬送先病院で我らを待つ

【想定開始】
現場到着すると男性が倒れており、AEDが装着されている 横にいる女性が「私は通りすがりの看護師です、AEDでショックしました。ちょっとしたら反応が戻りました」
(単なる意識障害とちゃうんかぁーい)
という心の声は一切顔に出さず、悟られないように居合わせた妻から状況を聴取する
バイタル測定と全身観察を終えたキャップから報告を受け、病院へ連絡し搬送

病院到着後、間も無くして想定終了・・・

・・・ぇ?

もう終わり? 病院着いてほとんど何もしてへんけど? 現場で救急隊何しとったん? ぉーい、バヤシーッ!!! 何しとったんじゃーい!
というおもたーい空気感が私を押しつぶす(※被害妄想です)

培ったラリー脳を発揮できず、またもや反省 この想定も現場にヒントが隠されていた
大事なことは 傷病者が 「何をしていて」「どうなったか」
倒れるということは、必ず原因がある それが内因性なのか外因性 人なのか物なのか はたまたテロなのか中毒なのか
現場にしか答えがないこともある

病院には早く搬送しなければならない しかし現場にしかない情報を漏らすわけにはいかない そのためには要点を絞った簡潔な情報収集が必要
目撃者は誰で、誰がキーパーソンなのか そして主たる症状はどうなのか
それを整理し噛み砕いて病院へ搬送する 原因がわからないと、病院に行っても根本治療が行えない

当たり前のこと それが救命のラリー
千里メディカルラリーの想定は難しかった
けど「こりゃありえへんわ〜」という想定が何ひとつない
10分というプラチナタイムに救命の真髄があることを思い知らされる

すべて現場に通じ、足らずは自身の未熟故
ほんと勉強になります 精進します

今夜のおつまみは何だかしょっぱいな 乾杯!! BAYASHI

ST7 20代男性 嘔吐+意識障害



ST7担当の看護師みやっちです。

通報内容「20代男性、嘔吐後レベル300」
「薬物かなー?」「なんかしら中毒だろうねー」「基礎疾患からの内因性も見落とさないようにしようー」等々の打ち合わせ…
先着救急隊teamと後着Dr.car teamで出動!!

現場には倒れている男性、座り込んでいる妹、お腹が痛いお母さん…
男性は明らかなショック状態。先着のキャップ、バヤシさん、ちか先生で診ることになった。
Drみっきーと私でお母さんの観察、情報収集。腹痛以外には何もなさそう。
何か情報を聞き出さないと…「息子さんとは一緒にお食事したりされましたか?」「昨日の夜ご飯…野菜炒めです」
座り込んでいる妹に話を聞くと「野菜嫌いで私は食べていません」

原因は明らかに昨日の野菜炒め!!! 野菜炒めで食中毒? 疑念を抱きながらも、コマンダーベーさんへ情報共有…あっという間の10分でした。

原因はなんと、実家から送られてきた”イヌサフラン”!!玉ねぎと間違えて摂取してしまったとのことでした。
イヌサフランの誤食や、毒性のキノコを誤って食べてしまった等、度々ニュースになります。
食べてしまった本人たちは間違いだと気づいておらず、あの手この手で情報を引っ張り出す難しさ、情報の重要さを感じました。

ST8 都市直下型地震 瓦礫の中の生存者



こんにちは。消防局救命士の園部と申します。今回は私がマンション崩落現場を想定した症例で瓦礫の中で活動した内容をお伝えします。

阪神大震災が起きた際に有名になった事象として、倒壊した建物から要救助者を救出しても数時間後に笑顔を見せていた方が突然亡くなってしまう「スマイルDeath」と言われる事象が数多く起きました。原因は重量物に挟まれているよう救助者を重量物から解放した際、「クラッシュシンドローム」と言われる状態となり、それが原因で救出しても心停止に至る恐ろしい現象です。
その「クラッシュシンドローム」が起きないように救急救命士や医師・看護師が瓦礫の中に入って医療行為を行い、心停止を防ぐ処置を行えるように日々訓練しております。
瓦礫の中で要救助者と接触し、医療行為と同等に重要なことが要救助者への「メンタルケア」です。何時間も暗闇に取り残され、自分だけでなく家族の安否など途方もない不安に苛まれる中、どのような対応ができるかアプローチした者の「人間力」が試されます。

本想定ではマンション崩落12時間後に夫婦2名の取り残された要救助者が確認されたため救助隊が接触するものの、1名(夫)は重量物に挟まれ救出に時間を要する方、もう1名(妻)は救助隊が接触するもすでに生命兆候がない状況でした。
救出できる可能性がある夫の処置を施す一方、妻の状況を悟ってしまうと錯乱状態となり人にとって1番重要な「生きたい」という気持ちを失ってしまうかもしれないため、言動に細心の注意を払いながらの活動となりました。
この症例の結果として全体の2位ではありましたが、さらに評価されるべき迅速・安全・的確なチームがいたことを思い知らされ、まだまだ研鑽に必要性を感じました。

最後にはなりますが医療や災害救助の現場の対応力強化に終わりはありません。さらなる高みを目指して自分だけでなく周りの人も巻き込んで精進していきたいと感じた1日でした。

まとめ

医師の野間です。
メディカルラリーに向けて、多数傷病者や外傷、中毒、ショック、意識障害などの復習や PALSやBLSOをはじめとした小児産婦の分野まで、幅広く学ぶことができました。身体診察や問診で患者さんの情報をどれだけ増やせるかは、日常診療でも特に重要視している事であり、改めて研鑽を積む機会となりました。
1番嬉しかった事は、練習を通して病院スタッフと救命士との結びつきが深まったことです。普段からどんな事を考えて病院へ搬送しているか、それぞれが日々どのような想いを持って仕事をしているか、本音で語り合うことができました。関わってくださった西宮消防の皆様、LOVEです。
応援やお手伝いをしてくださった皆様、心から感謝いたします。ありがとうございました!!