研究の概要

研究では、新しい医療機器の開発(例えば瞳孔径自動測定記録装置は小谷主任教授の高校時代の同級生たちと中尾博之准臨床教授とともに開発し、特許を取得しています)、栄養治療による侵襲反応の制御の研究、水素ガスや一酸化炭素ガスの抗酸化作用に着目した臓器障害軽減の研究、新ペプチドーム解析法による敗血症性ショック誘因物質の探索、遺伝子多型と病態の研究、免疫担当細胞のアポトーシス制御の研究、救急現場(病院前救護)をモデルとした災害現場と指導医療施設間で高品質な情報通信システムの開発、我々が最前線で治療にあたったJR脱線事故など実際の災害医療経験とデータに基づく研究など、多くの臨床応用を睨んだ研究を進めています。幅広い基礎・臨床的研究をテーマに、国内学会はもとより、アメリカ外科学会(ACS)、アメリカ集中治療医学会(SICM)、アメリカ及び国際ショック学会、アメリカ外傷外科学会(AAST)、国際外傷学会、アメリカ外科感染症学会(SIS)、国際外科学会(ISW)、ヨーロッパ蘇生協会(ERC)、アメリカ心臓協会(AHA)など、多くの国際学会でも積極的に発表しています。企業とも全身性炎症症候群の制御を目的に新しい栄養剤の開発などを行っており、産学共同研究も押し進めております。書く研究の概要は以下のとおりです。

 

<臨床・災害研究>

  1. 栄養治療による侵襲反応の制御の研究
    1. 早期経腸栄養の開始が重症患者の予後に及ぼす効果に関する関西地区多施設観察研究:すでに関西地区で10施設が参加し、終了した。現在データを集積中である。また、申請者は「日本版重症患者の栄養管理ガイドライン」作成委員会(日本集中治療医学会)の委員長を務めており、発言力と指導力があるため、本研究結果は注目される。
    2. 特殊栄養剤による病態制御の研究:アルギニン・グルタミン・HMB配合剤とn-3系多価不飽和脂肪酸(魚油)の静脈投与剤を用いた研究を進める。特に後者は企業との共同研究で臨床応用を目指している。
    3. サルコペニアと転帰:筋肉量の減少と機能低下(サルコペニア)と転帰の関連をCT画像解析で検討している。栄養管理介入によるサルコペニアと予後の改善も検討する。(科研費獲得)
  2. 重症患者のIL-18遺伝子多型と予後:IL-18の遺伝子多型と病態、予後の関連を引き続き症例数を増やして検討している。
  3. TNF-alphaとIL-18のプロモーター領域の遺伝子多型と予後の関連:患者の遺伝子と健常人の血液を用いてin vitroにおける同領域の遺伝子多型とサイトカイン産生、トロンボモジュリンの遺伝子多型と転帰の関連を発見し、さらに多施設研究を進行中である。
  4. IL-18とインスリンシグナルの関連を実験的に検討し、すでに一部は論文化した。
  5. 重症敗血症におけるanthrobin(AT)静脈投与の効果:重症病態モデルにおける ATの抗炎症効果のシグナルを追求し、一部を論文化した。
  6. 本邦の敗血症の疫学調査:重症敗血症を対象とした日本救急医学会および集中治療医学会による多施設観察研究の結果をすでに5本の英文論文として発表した。現在、治療(特に免疫グロブリン)と予後の結果を論文化中である。
  7. 瞳孔自動モニター:両眼の瞳孔径及び対光反射を同時に計測記録する装置を開発し、臨床検討をしている(英語論文投稿準備中)
  8. 救急現場(病院前救護)をモデルとした災害現場と指導医療施設間で高品質な情報通信システムの開発
  9. 実際の災害医療経験(JR福知山線脱線事故、東日本、熊本救護、伊勢志摩サミット救護)とデータに基づく研究:当科はJR福知山線脱線事故では現場医療に加えて、病院で113名の患者を受け入れ、多数同時発生患者に対するトリアージと治療の経験、さらに100分の詳細なビデオ映像記録があり,さらに東日本、熊本救護、伊勢志摩サミット救護の実経験があり、貴重な研究資料をもつ。実災害医療に対応した職員が多数おり、医療者の心の研究において貴重な研究対象となっている。

 

<基礎研究>

  1. 水素ガスの抗酸化作用に着目した臓器障害軽減の研究
    1. 水素吸入による肺障害の軽減:昨年度確立したラット出血性ショックモデルを用いて、引き続き実験を進めている。
    2. 水素含有水の腹腔内投与による侵襲後下腸管麻痺改善の研究:開腹侵襲後の腸管麻痺が水素含有水の腹腔内投与により改善することを確認した。現在機序の解明に取り組んでいる。
  2. 一酸化炭素(CO)の抗炎症作用:ラット心移植モデルでCO吸入が心筋の虚血再灌流障害を軽減する機序を研究する。
  3. 新ペプチドーム解析法による敗血症性ショック誘因物質の探索:本技術を確立し、症例集積している。網羅的解析でショックを誘導する未知のペプチドを同定する予定。合成ペプチドを作成して生理活性を検討し、血管作動性ペプチド作成法を探索する。(科研費取得)
  4. 好中球NETsと病態の研究:重症患者の好中球アポトーシス、NETs、および凝固障害の関連を敗血症患者の検体を用いて研究している(科研費取得)
  5. 侵襲下精巣細胞Ap:男性ICU生還者の不妊の機序の検討: IL-18がdeath receptor pathway を介してLeydig cell Apを誘導する。一部は論文化した。(科研費獲得)

 

 

業績記録

 

ジャーナルクラブ

  • Helmerhorst HJ, Schultz MJ, van der Voort PH, Bosman RJ, Juffermans NP, de Wilde RB, van den Akker-van Marle ME, van Bodegom-Vos L, de Vries M, Eslami S, de Keizer NF, Abu-Hanna A, van Westerloo DJ, de Jonge E:Effectiveness and Clinical Outcomes of a Two-Step Implementation of Conservative Oxygenation Targets in Critically Ill Patients: A Before and After Trial.Crit Care Med. 2016 Mar;44(3):554-63. 布施知佐香
    (2016年09月23日)
  • Liu W, Hu L, Chou PH, Liu M, Kan W, Wang J:Comparison of anterior decompression and fusion versus laminoplasty in the treatment of multilevel cervical ossification of the posterior longitudinal ligament: a systematic review and meta-analysis.Ther Clin Risk Manag. 2016 Apr 26;12:675-85. 福井周作
    (2016年09月16日)
  • Sierink JC, Treskes K, Edwards MJ, Beuker BJ, den Hartog D, Hohmann J, Dijkgraaf MG, Luitse JS, Beenen LF, Hollmann MW, Goslings JC; REACT- study group:Immediate total-body CT scanning versus conventional imaging and selective CT scanning in patients with severe trauma (REACT-2): a randomised controlled trial.Lancet. 2016 Aug 13;388(10045):673-83. 岡本彩那
    (2016年09月02日)
  • Ane Uranga, MD; Pedro P. España, MD; Amaia Bilbao, MSc, PhD; Jose María Quintana, MD, PhD;Ignacio Arriaga, MD; Maider Intxausti, MD; Jose Luis Lobo,MD, PhD; Laura Tomás, MD; Jesus Camino, MD;Juan Nuñez, MD; Alberto Capelastegui, MD, PhD; Duration of Antibiotic Treatmentin Community-Acquired Pneumonia A Multicenter Randomized Clinical rial ;JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2016.3633 Published online July 25, 2016. 岩田隆一
    (2016年08月26日)
  • Laurent Azoulay, PhD; Kristian B. Filion, PhD; RobertW. Platt, PhD; Matthew Dahl, BSc; Colin R. Dormuth, ScD; Kristin K. Clemens, MD, MSc; Madeleine Durand, MD, MSc; Nianping Hu, MD, PhD; David N. Juurlink, MD, PhD;J. Michael Paterson, MSc; Laura E. Targownik, MD, MSHS; Tanvir C. Turin, MD, PhD; Pierre Ernst, MD, MSc; and the Canadian Network for Observational Drug Effect Studies (CNODES) Investigators:Association BetweenIncretin-Based Drugs and the Risk of Acute Pancreatitis:JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2016.1522Published online August 1, 2016.  坂田寛之
    (2016年08月19日)