Taka at Trauma Center of Robert Wood Johnson Medical School University Hospital:New Jersey便り⑫

 

12月28日は朝から雪が降っています。今日は朝からLivingstonにあるSt Barnabas Medical CenterのBurn Centerに見学に行きました。某社のLuisという以前兵庫医大に来たセールスマネージャーがNewBrunswickからLivingstonまで車で送ってくれました。ということは、着くまでの1時間半、二人だけで会話をしなくてはならず、ひたすらListening and talkingですごくいいtrainingになりました。

病院は田舎の住宅街の中にぽつんとある感じでRWJUHのような雰囲気ではなく建物は古く一部新造築していました。Burn centerは2階にありました。そこのTopのDr Maranoが対応してくれました。実はDr Maranoはジョージ先生の上司だったLowry先生やCalvano先生らとCornel medical centerで一緒に働いていたことがあってよくご存知で話が盛り上がりました。

Burn Centerは12床の熱傷患者だけの専用ICUと急性期を過ぎた患者さんが入院するSTEPDOWN フロアという16床の構成でした。ICU、リカバリーともに全室個室管理でした。NJに位置していますが、NYCからの患者が空陸から転院もしくは搬送されてくるそうです。Burn ICUは1床空きで結構埋まっていました。TBSA40~60%の患者さんが多かったです。受傷機転は、火焔熱傷が最も多く、自宅火災が最多、次に調理中に袖口から引火したもの、自殺企図、労災、消防士の労災が多いそうです。熱傷専門の医師は4名(米国ではGeneral Surgeryを習得しないとBurn Surgeonになれません)だけであとはナース、technicianといって国家資格ではないけど自前でトレーニングしたコメディカルスタッフ、PT・OT・ST・MSWなど70名以上のスタッフで運営しているとのことでした。

Dr MaranoはICU患者さんの病態を1人ずつ丁寧に教えてくれました。Burn Centerには熱傷処置室があったのですが、驚いたのは兵庫医大のBurn Centerの処置室と構造がほとんど同じだったことです。最先端の米国の設備が兵庫医大にあるといっても過言ではないのです。ちょうど処置をしていたので写真を撮ることができませんでした。日本と最も異なっていてかつ、驚いたのは熱傷の処置、つまり水洗浄なのですが、それを医師でもなくナースでもなくtechnicianがしていることです。このシステムは医師法などでさすがに日本では無理かな?と思いました。これらのコメディカルスタッフがある程度医療行為をできるのが米国の特徴です。

広範囲Ⅲ度熱傷の治療のストラテジーについても聞いてみました(英語が通じなかったら困るので聞くことLISTを英語で書いて同じものをDr Muranoにも渡しました。)ここは興味深いというか米国のシステムの問題ですが、熱傷の治療は患者の加入している保険により異なることです。なので簡単にコストのかかる人工真皮やCEA(培養表皮)は使えないそうです。だからそれよりも安価なallograftを使う頻度が多いのだそうです。実際当日入院してた16歳の少年はガソリンスタンドで給油してる時にライターから引火し60%の熱傷となっていましたが、貧困な家庭で保険が使えないので、治療をあきらめないといけなく、敗血症を合併したので明日抜管するそうです。(積極的治療ができないときの抜管は安楽死には該当しないそうです)

重症熱傷の治療そのものは日本と変わりないことがわかりました。このような条件でABLSをするのも難しいだろうなというのが正直な感想です。あとはやはり熱傷患者など特殊な治療を要する場合はトレーニングを受けた医師やスタッフがいる施設に集約しそこで治療するべきだということです。1年で数件しか治療しない医師や施設に入院させても予後は悪くなるだけとういのは既にEBMで証明されています。今回はさらにそれを確信したのと、当センターが地域の集約的機関としてイニシアチブをとるべきだと感じました。今後、ここのBurn centerでの短長期研修ができるか尋ねたら喜んでといってくれました。RWJUHと姉妹関係だしいつでもどうぞといってくれました。最後に記念撮影をしてLivingstonを後にしました。収穫の大きい1日でした。