臨床

6ヶ月短期集中習得プログラム(Off the job)を実践する
標準化された救急初期診療、外傷初期診療、集中治療の完全習得(On the job)

私たちの目指す臨床教育は、救急車の搬入台数でもなく、疾患重症度でもありません。しっかりとOn the jobで、標準化された救急初期診療、外傷初期治療、集中治療の完全習得を実践することです。On the jobの実践を裏打ちするものは、Off the jobにおけるスタッフドクターによる30分程度の短時間セミナーを3〜4回/週程度開催し、6ヶ月の短期間で集中的に、救急初期診療から外傷初期治療(開腹術、腸切除、腸管吻合、人工肛門造設、ガーゼパッキング術など)、整形外科初期診療(シーネ固定、外固定、牽引方法など)、集中治療(人工呼吸管理、体外循環管理、薬剤管理、NSTなど)を座学で習得するプログラムを開始しました。座学の理論と実践を繰り返すことにより深い理解と習得を狙っています。
Off the job、On the jobで成熟したのちは、近隣の連携関連実地施設へ短期間ずつローテーションし、我々の教室で受けた教育を連携施設で実践する好循環を展開します。専門医取得後には、地域のメディカルコントロールと救命センターのマネージメントを学びながら指導医取得を目指し、なるべく早い段階で近隣救命センターのセンター長として手腕を発揮してもらいます。そのような環境が整っていることも魅力の一つです。

実際の臨床は、指導医師と専攻医、研修医のペアでファーストタッチ(救急初期診療)を行います。救急隊要請に対し、応需率90%以上を目指しています。救急初期診療、外傷初期診療では、疾患によりその診療、診断方法のマニュアル化を目指しています。誰が診療してもその質を一定に担保でき、見過ごしを防ぐことを目的にしています。2次病院の救急診療から3次救急医療施設での診療対応を網羅しています。また、兵庫医大ER(仮称)開設の準備を進めており、マニュアル化と同時に救命科入局以外の医師の初期診療教育も充実を図っています。
翌朝の全体カンファレンスで救命救急センターの医師総出のもと、放射線医師、各診療科医師、法医学医師、薬剤師、看護師、医療事務、医学生も参加し多方面から包括的に1症例ずつレビューし、さらなる診療と教育の質の向上に努めています。初期診療後は疾患重症度、診療科特異度に応じて、集中治療室、救命一般病棟、各診療科病棟に入院します。集中治療においては、ピラミッド型の診療・指導方法を導入しています。いわゆるopen型ではなく、ひとりのリーダー医師のもと、全患者の主治医となります。これも、集中治療の標準化と見過ごしの防止、正直なところ、当センターは“症例のるつぼ”ですので、様々な症例を経験頂きたい希望もあります。目指すべきリーダー医師が常時在院していることも魅力です。
入院後は理学療法士・言語療法士・呼吸療法士やケースワーカーを交え、リハビリカンファレンスを定期的に行い、病態のみならず退院後の社会的および環境因子も考慮した救急医療に取り組んでいます。
ラピッドカーを用いたプレホスピタル医療も充実しています。全員の医師に出動してもらいます。
院内活動のひとつに栄養サポートチーム(NST)のメンバーでもある栄養管理専門資格を持つ医師、看護師、薬剤師がチームとなり(ICU-NST)、重症患者の栄養治療も行っています。
また、災害拠点病院に指定されている当センターにはDMAT(災害医療派遣チーム)を2チーム以上構成でき、災害医療コーディネーターと統括DMAT隊員を要し東日本大震災、熊本大震災を始めとする、台風、航空機事故などの地域災害や、大規模災害、核・生物・化学兵器によるCBRNEテロに備え、県内外の災害訓練や、阪神大震災に教訓を得た多数傷病者受け入れ訓練も独自にアレンジしながら発展させてまいりました。
医学生や、病院内外を問わず若手および中堅医師・看護師・コメディカルスタッフ・救命士等に対しても、BLS(一次救命処置トレーニング)・ICLS(心停止に対する蘇生トレーニング)・ISLS(脳卒中初期診療トレーニング)を定期的に院内で開講し実践に応用できる能力を養えるように講義・指導をしています。
このように、On the jobとOff the jobをクロストークさせる合理的主義です。病院前診療→救急初期または外傷診療→集中治療のシームレスな治療体系の中で、専門医を取得し、各診療科との集学的医療で熟成を図りながらセンターの機能をマネージメントするリーダーシップとして指導医を取得し、将来的には救命センターの運営まで見据えたセンター長の育成までが私たちの目標です。
また、サブスペシャリティーのライセンスを取得している多くの指導医が在籍していることも魅力です。救急専門医以外に、以下に挙げる専門医や、ライセンスも同時に取得可能です。

  • 集中治療専門医、外傷外科専門医、熱傷専門医、内視鏡専門医
  • DMAT、NST

私たちのOB、OGには、さまざまな経歴を持ち、その領域の第一人者としてご活躍している医師が多いのも特徴です。以下に挙げます。

  • JICA、国境なき医師団、DMORT、DPAT、日本レスキュー協会、がれきの中の医療、消防学校
  • 大阪大学救命救急センター、神戸大学救命救急センター、近畿大学救命救急センター、千里救命救急センター、兵庫県災害医療センターなど

以下に多く搬入される疾患を挙げます。

  • 心肺機能停止:経皮的人工心肺補助循環装置(PCPS)の導入、冠動脈形成術、脳低体温療法
  • 重症急性膵炎:動脈注入療法、血液浄化療法
  • 劇症肝炎:血漿交換療法
  • 食道静脈瘤破裂、出血性胃潰瘍:内視鏡的止血術
  • 重症心不全、呼吸不全:経皮的人工心肺補助循環装置(PCPS)、人工心肺(ECMO)
  • 重症肺炎:人工呼吸装置
  • 急性腹症:消化管穿孔、虚血性腸炎、腸閉塞
  • 急性中毒:血漿交換
  • 周産期救急医療
  • 多発外傷:頭部外傷・胸腹部外傷・四肢骨盤外傷などの緊急手術
  • 重症熱傷:自家培養表皮や人工真皮による植皮術
  • 皮膚軟部組織感染症
  • 臓器移植