石川 貴巳 医師
整形外科医であった父の影響もあり、若い頃から手術に興味を持っていました。急性医療総合センターへの配属は予想も希望もしていなかったのですが、チームに加わるからには、この場所でしか経験できないことを学びに変え、専門医としてのスキルアップに生かせる何かをつかみたいと思っています。
治療効果が大きい外傷オペに大きなやり甲斐
私は兵庫医科大学の出身です。レジデント時代を含めて医師としての最初の3年間をこの病院で過ごしました。その後、いろいろな病院で整形外科の専門医としてのキャリアを積み、さまざまな患者さんと接してきました。もともとオペへの関心が高かったこともあり、自分の技術で傷を治す仕事に大きなやり甲斐を感じています。ほかの診療科も“患者さんを治療する”というミッションは同じでしょうが、整形外科が扱う外傷は治療効果が大きいものが多いので、医師としての力を発揮できたことを実感しやすいのではないかと思います。患者さんが元気になられる様子を見るのは、何度経験しても嬉しいものですね。
2015年4月から、この急性医療総合センターで働くようになりました。総合医や救急医を目指す医師にとってはもちろん、私のような専門医志向の医師にとっても、学べることの多い場だと思います。
診療科を越えた意見交換で命を救う
医師としては中堅と呼ばれる世代ですが、3次救急に関わるのは今回が初めて。骨盤骨折のような激しい外傷を目の当たりにするのは、小さな病院では滅多にないことですので、急性医療総合センターでしか立ち合えない症例に対して、しっかりと自分の技量や知識を生かし、経験を糧にしていきたいですね。
また、他科の先生と日常的に接するのも初めてなので、カンファレンスなどで「へぇ」と感心することが多々あります。ひとりの患者さん、ひとつの症例に対して、こんなにも違う見方があるのか…と。また、お互いの専門領域やキャリアを尊重しながらも、意見がぶつかることを恐れずに話し合える雰囲気があります。
2013年3月に設立された急性医療総合センターは、オペ室の数も多く、医療機器なども揃っています。外科として技量を発揮するには恵まれた環境だと感じますし、それは患者さんにとっても良い環境であると言えるでしょう。ICUとCCUとの連携も密ですね。
生活のリズムが変わったことに戸惑いも…
整形外科医になって初めての創外固定を経験するなど、3次救急ならではの症例を担当できることは、とてもありがたいことだと思います。半面、生活のリズムが専門医とは大きく違うので、心身ともにキツイと感じることもしばしば。当直があるのは当然ですが、お昼間に搬送がなかったかと思えば、夜間になって急に忙しくなるなど、いつ何が起こるかわからないという緊張感に晒されますからね。私は、日中のオペ数が多いことには慣れているのですが、この不規則なリズムには1年経った今でも慣れることができません。
また、専門医が「主治医」として患者さんと1対1で向き合い、ときには長くお付き合いしていくことに比べると、救命救急ではチームで治療に当たるので、患者さんとの関係性が薄いかなと感じることもあります。どう患者さんと接したいかという希望は医師それぞれの考え方があると思うので、どちらが良い悪いということではなく、違いがあると知ったうえで進路を選ぶ参考にしていただければと思います。
救命救急での経験を生かして頼られる医師に
医師を志すきっかけをつくってくれた父は、私が目標とする存在でもあります。患者さんに慕われて頼りにされている姿に憧れます。いつまでこのセンターで働けるのかは人事次第ですが、自ら選ばなかった道だからこそ、得難い経験が積めるのだと考えて務めあげるつもりです。チーム医療の中で「へぇ」と思いながら得てきた多角的な視点や考え方が、いずれ一人で患者さんのすべてを診る専門医に戻った時に大きな力になるといいですね。