センター長からのメッセージ
<救命救急センターの運営方式>
当センターの特徴は、基本的にセンターのスタッフが診断・治療を行い、グレーゾーン(複数の病態が複雑に合併している患者)や特殊な領域の専門医が必要な場合は、全診療科目がある大学病院の利点を生かし、各科と協力して高度な治療を展開します。中でもCCU(冠疾患科)は救命救急センタースタッフとして同じフロアで仕事をしており(振り返ればそこにいるという状態です)、周産期センターやすべての手術室も同じビル内においてエレベーターで直結しており(同じ家に住む家族のような関係です)、あらゆる複合疾患に俊速に対応しています。
<臨床業務の特徴と実績>
習熟した上級医と活気ある若手医師がバランスよく救急医療を行っており、2014年度入院患者数は1774件と前年比122%増となっております。また当センターは受け入れ不可件数が少ないのも特徴で、「患者さんを選ばない救急医療」「全方面の疾患に対応する救急医療」をモットーとしております。
当センターの傷病者の内訳は外因性疾患が30〜40%、内因性疾患が60〜70%となっています。外因性疾患では多発外傷を積極的に受け入れ、頭部外傷・胸腹部外傷・四肢骨盤外傷などの手術に24時間体制で対応しています。2014年度には熱傷センターを救命救急センター内に新設し、救急・形成外科・リハビリの専門医師・看護師・リハビリスタッフなど重症熱傷患者にチーム医療をあたっており、2014年度は32件の重症熱傷患者を受け入れました。この数字は全国の救命救急センター平均5例を大きく上回っており、メディアにもよく取り上げられています。また、先端医療として重症広範囲熱傷患者に対して、自家培養表皮や人工真皮による植皮術を行っており、良好な成果をおさめています。四肢(手指)切断に対してが、スタッフ内でマイクロサージェリーチームを組織し、再接着術等も積極的に受け入れています。内因性疾患では、2014年度は心肺機能停止患者を190件受け入れており、心室細動による心肺機能停止患者に対しては初療室で迅速にPCPS(経皮的人工心肺)を導入し、必要に応じCCUと協力し冠動脈形成術、脳低体温療法を組み合わせ、社会復帰できるよう高度集中治療を実践しています。社会問題となっている周産期救急医療に対して産婦人科・小児科などと協力して対応しています。重症急性膵炎に対する動脈注入療法や血液浄化療法、劇症肝炎に対する血漿交換療法、食道静脈瘤破裂や出血性胃潰瘍に対する内視鏡的止血術、前述の重症心不全や呼吸不全に対する補助循環装置や人工心肺を用いた高度集中治療を実践しており、阪神間にとどまらず遠方からの転院依頼もヘリコプター搬送などを利用して受け入れています。
<チーム医療>
当センターはチーム医療をモットーとしており、毎朝のカンファレンスでは当科の医師だけでなく看護師、薬剤師、医療事務、救急救命士、学生、法医学の医師も参加しています。また理学療法士・言語療法士・呼吸療法士やケースワーカーを交えたリハビリカンファレンスを行い、全身状態や環境因子も考慮した救急医療に取り組んでいます。また、栄養管理医師の資格であるTNT(Total Nutrition Therapy)医師資格を持つ教室員が私を含めて3名おり、大学病院全体の栄養サポートチームのメンバーとして院内全患者の代謝・栄養管理に活躍すると同時に、2013年度から救命救急センター内の重症病態における代謝・栄養管理を科学的に推進する救命救急センターNSTを立ち上げ、活動しています。ちなみに私は2005年に本学に栄養サポートチームを立ち上げ、初代ディレクターを4年間勤め、全病院的なチーム医療の礎を築きました。
<Off the job訓練>
Off the job訓練では、多くの教室員がJATEC, ICLS, BLC, ACLS、ISLSなど多くの救急・災害医療関連の訓練コースのインストラクター資格を持っており、本学でのコース開催も行ってきました。
<海外医療および教育活動>
また私が監事を拝命しておりますNPO(JPR)の活動として、正井会長を支えてカンボジアでの医療支援活動を行っています。また、私はカンボジア軍医科大学の教授も拝命し、現地での講義やカンボジアの医学生の兵庫医大で研修受け入れを行っています。カンボジアではポルポトにより知識人が虐殺され、医師は40名しか残らなかったので、今後は医師のみならずコメディカルを含めた教育プログラムを作成しますが、せっかくなので外傷外科医を目指す若い日本人の教育も組み込むつもりです。
<ロケーション>
本学は阪神電車武庫川駅前にあり、大阪梅田・難波、神戸三宮まで13分〜20分の交通至便なところにあります。また、甲子園球場までは歩いて行けるという虎ファンには涙もののロケーションです(もちろんアンチ虎党にも便利です)。東西には芦屋から尼崎まで、北は丹波篠山方面まで、異なった地域性を持つ広い診療圏を受け持っており、非常に多彩な症例が多く経験できます。