Taka at Trauma Center of Robert Wood Johnson Medical School University Hospital:New Jersey便り⑦

NJ便り⑦

今週の上級医はDr HANNA(ハンナ)です。Dr HANNAは凄くおっとりした風貌ですが、消化器外科と外傷外科に対するストラテジーは完璧に頭に入っていて、次への処置や治療への移行がものすごく早い先生です。Stab Wound(刺創で)Abdominal Compartment SyndromeでNPWT(RWJUHではVACを使用しています)を使用している患者や大腿部のNPWT使用患者もデブリードマン術後48時間以上経過して感染徴候がないから明日手術室で創閉鎖をやろうといっていました。また、Dr HANNAは凄く私の意見を聞いてきます。What do you think in Japan?何度も聞いてきます。彼は丁寧な英語で話しかけてくれるのでdiscussionができやすいのでとても勉強になります。頸椎損傷で気管切開と胃瘻が必要な患者さんがいるのですが、麻酔科から熱があるのにやるの?といわれていました。トラウマチームのレジデントたちは肺炎もないし白血球やCRPも上昇していない、他の感染となるような所見はない、中枢性の熱ではないかといっていました。Dr HANNA先生が「TAKAはどう考える?気切や胃瘻をこのconditionでする?」と尋ねてきました。私はプロカルシトニン(PCT)が高値でなければ手術をするし、PCTを評価したらどうか?と答えました。Dr HANNAはレジデントの先生らに「TAKA suggests good idea!」早速PCTを測ってみようといっていました。治療方針を相談してくれたり聞いたりしてくれるのはチームの中に入れている感が実感できて嬉しいものです。

米国では1歳から44歳までの死亡原因の1位が外傷でその中で多いのが交通事故・転落・銃創など武器によるものとなっています。実際にtrauma centerにはMVC MVA Fall GunshotWoundが多いです。また日本と同様アメリカも核家族化が進み高齢者の屋内外での転落外傷がかなり多いです。これに加えCAD(冠動脈疾患)やCVA(脳卒中)の罹患率が高く多くの人が抗血小板薬を内服しているので、転落した後の頭蓋内出血や血胸、腸間膜出血が多いのが特徴です。今日も転落による右血胸がかなりたまった高齢男性が搬送されて、若手の先生らがERで胸腔ドレナージを入れていました。エコー下で行っていたのですが、ちょっと時間がかかってしまっていて遠目から見ていたら初療のナースが「TAKA、あなたがやったほうが絶対早いでしょ!あなたがやりなさいよ」といっていました。こういう風に思われていることも光栄なのかもしれませんね。

最後に今日は現場の写真がないのでRWJUHで麻酔科医として働いている唯一の日本人のDr Tanaka夫妻の写真をお見せします。彼は米国生まれで小学校が日本だったらしく、中学からカナダの中高で勉強してアイルランドの医大を出てRWJUHの麻酔科で働いているらしく、オペ室で知り合い、週末にNJで人気の小籠包のお店とアジアンフードマーケットに連れて行ってもらいました。少し割高だけど、赤いきつねやカレーや日本米やふりかけを購入しました。縁は大切ですね。