中島 有香 医師

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学生時代から、子どもの成長に立ち合いながら、ゼネラリスト的に全ての診療ができる小児科に興味を持っていました。とりわけ急性期治療が自分に向いていると思ったのですが、大学病院の小児科では慢性疾患にあたるケースが大半。小児ICUのスペシャリストである尾迫貴章先生のすすめもあり、成人の救命救急で経験を積んでいるところです。

上に習い、下に刺激される環境を求めて大学病院へ

pic_nakajima兵庫医大に進学した当初から、小児科医になることが目標でした。専門の枠にとわれず総合的な診療ができますし、子どものおそるべき回復力や成長ぶりを間近に感じられることに魅力を感じていたからです。
研修医時代を救急受け入れに積極的な京都第二赤十字病院で過ごしたこともあり、急性期診療に強い関心を持つようになりました。瞬時の判断が求められることや、医師が自分から介入していける点が、自分の目標とするところかなと感じていました。
医師になって4年目のとき、結婚を機に転居・転職をすることに。大きな病院のほうが、上からの指導が仰げると同時に、研修医をはじめとする下の世代の先生がどんどん入ってきて刺激してくれるので、モチベーションを高く保てそうだと考えて、兵庫医大病院の小児科に移りました。

小児と成人の違いに愕然! 初心に帰って学び直した

学小児科では白血病などの血液腫瘍系の疾患を担当していました。小児病棟の患者さんは慢性期のケースが大半でしたから、急性期治療にも興味のあった私としては、職場を変えるべきかどうか悩みました。外部の病院を見学しても決断がつかずにいたとき、小児救急のスペシャリストである尾迫先生から成人の救急、集中治療を経験することを勧められたんです。これが大きな動機付けになり、小児科から救命救急センターに移って、大人の患者さんを診る経験を積んでいくことに決めました。
はじめのうちは、昨日まで乳児を診ていた私が、今日は90代のおじいちゃんを診ているという具合で、慣れないことの連続でした。聴診器を当てるとき「モシモシしますよ」とお声がけする癖は、2ヵ月くらい取れなかった・・・ウソのような本当の話です。
各種検査の正常値や投薬量の標準など、何から何まで大人と子どもとではまるで違うため、4年のキャリアで培ったはずの“勘”が役にたちません。研修医に戻ったつもりで専門書を繰っては、基礎知識から覚え直していきました。

信頼できる仲間がいるから、メリハリをつけて働ける

私はオンのときはどれほど忙しくても限界まで働きたいタイプです。だから、身の程をわきまえずに頑張りすぎて、疲労困憊、頭は飽和状態に陥ることも・・・。それでも続けられたのは、前向きな仲間に囲まれていたおかげです。信頼して現場を任せられる先生たちがいるからこそ休むべきときにキチンと休みが取れて、オンとオフとのメリハリがつけられるのだと感謝しています。
とくに同性で年下の岩野先生の存在は、私にとって良い刺激。また、寺嶋先生のように結婚して子育てしながら活躍しておられる先輩がいることも励みになっています。次は私が下の世代の手本となり、相談役として頼ってもらえるよう頑張らなくちゃいけませんね。

回路を増やし、“警報”の感度を高めて命を救いたい

pic_nakajima2救命救急に来てからの2ヵ月は、毎日が反省会という感じです。
後からゆっくり時間をかけて検証すると、「あれもできたのではないか」、「こんな可能性を見落としていたのでは・・・」と、必ず課題がみつかります。100%の対応ができなかったことを悔やむのではなく、次から使える回路を少しでも増やしておくことが大切だと思えるようになりました。リスクに対して“警報を鳴らす”感度を高めていければ、より多くの患者さんの命を救えるでしょうし、小児科に戻ったときも役に立つと思います。
積極的に関わろうという気持ちがあれば、いくらでも学ぶことができる救命救急センターは、強気な性格の私にぴったりの職場だと自己分析しています。同じような性格だと思い当たる方は、ぜひセンターの門をたたいてみてください。研修医も大勢いますし、7年目の私も1年目のような気持ちで関われる、そんなチャレンジ精神あふれる職場ですから。